7月6日、タイ・ランシットスタジアム「KICK REVOLUTION 日本-タイ5VS5全面対抗戦」次峰戦 115ポンド契約3分5ラウンド

松崎公則(日本/STRUGGLE) 対 アッサワテープ・シットダープニット(タイ) 4R TKO 松崎選手勝利。

<文・布施鋼治 写真・早田寛>

「マツザキは38歳」
タイ語で松崎公則の年齢が紹介されると、観客席からどよめきが起こった。それはそうだろう。10~20代の選手が大半のタイで、アラフォーの現役はひじょうに珍しい。
しかも、当初の発表ではアッサワテープ・シットダープニットは19歳と発表されていたが、前日計量で16歳であることが判明した。この程度の誤差はタイでは当たり前だ。

松崎公則2
身長も事前のアナウンスでは松崎より2㎝高いことになっていたが、実際にはもっと差があるように思えた。こちらは成長期のせいだろうか。そのスリムな体型を目の当たりにすると、アッサワテープは典型的なムエカオ(ヒザ蹴りを中心に試合を組み立てるタイプ)のように思えた。
もっとも、それを一番実感していたのは当の松崎だった。
「ムエカオにはムエマッド(パンチを中心に試合を組み立てるタイプ)」という諺を思い出し、試合をイメージしたという。
「こっちはパンチとローでいこうかなと思いました。最初はローで削って、4Rくらいで倒したい。そう思っていたら、その通りになりましたね」

松崎公則
試合の流れもフィニッシュもイメージ通りだったら、選手冥利につきる。この日は松崎はまさにそうだった。1R、インローをテンポよく決め、ワンツーで下がらせる。そしてアッサワテープが組みに来ると、カウンターのヒジ打ちを決めた。
2Rになると、松崎は自ら距離をつめ、20歳以上年齢差のあるアッサワテープを追い込む。痛烈なボディフックや右フック。アッサワテープは首相撲を狙ってクリンチを試みるが、苦し紛れにしか見えなかった。何よりも目が怖がっている。
3Rになっても、松崎のプレスが弱まる気配はない。松崎がヒジ打ちをヒットさせると、観客席から再びどよめきが起こった。松崎は「(観客席の反応は)気づかなかった」と証言するが、これほど痛快なことはあるまい。売りは年齢だけではないのだから。
観客も不甲斐ないタイ人に見切りを付け、アラフォーの日本人を応援しているように見受けられた。
そして4R、アッサワテープをコーナーに追い込んだ松崎は右フックをクリーンヒットさせてダウンを奪う。
「1、2、3…」

松崎公則
片ヒザをついた体勢でレフェリーはダウンカウントを数え始めるが、途中でそれを諦めた。大の字になったアッサワテープはそのままピクリとも動かなかったからだ。この時の会場の盛り上がりようといったらなかった。「どうだ、見たか!」
とでも言いたげに、松崎は下から2段目のロープに跨がってKO勝ちをアピールした。この日、会場にはSTRUGGLEの応援団が10名以上駆けつけていた。その応援が大きな励みになったことを松崎は否定しない。
「最初から足が効いているせいもあったけど、2Rくらいからいけると思いました。危ないと思った攻防? ほとんどなかったですね。ちょっとハイキックがかすめたくらいかな」

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松崎がリングを下りると、何人ものタイ人の観客が38歳の英雄に握手や記念撮影を求めた。国籍や年齢に関係なく、いいファイトをした選手には惜しみない声援や拍手を送る。それも、タイの流儀のひとつである。
翌日のムエタイ専門の日刊紙「ムアイ・サヤーム」には、小さいながらも松崎のガッツポーズの写真が掲載されていた。
ムアイサヤームの記事と写真