3月10日に開幕するRISE WORLD SERISE-58㎏級トーナメント一回戦で志朗はウラジスラフ・ミキータス(ウクライナ)と対戦することになった。ミキータスは初来日ながらアマチュアムエタイでも名を残す未知の強豪だ。いったいどんな闘いになるのだろうか。

ウクライナのファイターといえば、かつてPRIDEで活躍した″ロシアンフック″のイゴール・ボブチャンチンが有名。その後70㎏級のアルトゥール・キシェンコも魔裟斗や小比類巻貴之の好敵手として名を馳せた。
今回RISEの世界トーナメント一回戦で志朗と対戦するウラジスラフ・ミキータスも、ボブチャンチンやキシェンコに続き第3のウクライナ人ファイターとして日本に名を残すかもしれない。


プロのキャリアはわずか21戦ながら、この23歳の若者はIFMAのヨーロッパ王者やナショナル王者になっている。この事実を無視することはできない。IFMAとはInternational Federation of Muay Thai Amateurの略。翻訳すれば国際アマチュアムエタイ連盟となる。その名の通り、アマチュアムエタイの国際組織で、国際オリンピック委員会(IOC)公認団体スポーツアコードにも加盟しているしっかりとした競技団体だ。
そのレベルは群を抜いており、国際大会ともなればタイから軍隊系のジムに所属するプロの現役チャンピオンやトップランカーが出場することも珍しくない。「だったらどこからお金が出るの?」という突っ込みがありそうだが、心配はご無用。タイでは国が認めた国際大会で入賞すれば、国から多額の報奨金が出る仕組みになっているのだ。
だからこそ志朗も決して楽観視はしていない。「そんなガチガチのムエタイ組織が主催する国際大会に出て勝っているのだから、ミキータスは普通に強いと思います」
現在ウクライナはロシアと対立しているが、もともとは旧ソ連圏に属していた。そのせいか、未だ社会主義体制の名残りが根強く残っており、キックボクサーはアマチュア大会とプロの大会を行き来しながらキャリアを積み重ねる。しかも、ミキータスのキャリアを見れば、K-1ルールの国際大会でも王者になっているから、ムエタイとは似て非なるRISEルールに泣かされることもあるまい。


ミキータスの公式身長は176㎝だが、試合映像を見た志朗は「もっと背は高いのではないか」と予想する。「ただ、タイでもこの階級では180㎝くらいの選手も多い。闘いづらくないといったら嘘になるけど、自分のローやパンチは当てやすいと思っています」 RISEデビュー戦となった工藤政英戦ではあえて自分のベースであるムエタイをほとんど封印したうえでの闘いに挑んだが、今回はRISEでも応用の効くムエタイテクニックをもっと使おうと考えている。


「前回のRISEとムエタイの比率は8対2くらいだったけど、今回は5対5くらいで構成しようと思っています。一度RISEルールを経験してみて、もっとムエタイを入れた方がいいと思いました」
ミキータスに勝てば、準決勝ではルンキット(タイ)とかつて那須川天心に善戦したフレッド・コルデイロ(ポルトガル)の勝者と闘うことになる。下馬評では「ルンキット有利」といわれているが、志朗は現在タイでは志朗より上の階級で闘うケースが多いルンキットは「減量がきついはず」と読む。


「ルンキットは17歳と成長期の過程にいるし、普段は68㎏くらいあると聞いています。彼が58㎏で闘うというのは違和感がある。(タイでは2階級も違うので)自分と闘う可能性が出てくるとは夢にも思わなかったですね」 58㎏級トーナメントにエントリーしている日本人選手は那須川天心と志朗のふたりのみ。決勝で夢の日本人対決は実現するのか?

 

TEXT:布施鋼治 PHOTO:ペルシー・タカヤマ

Profile:ウラジスラフ・ミキータス(Vladyslav Mykytas)ウクライナ出身 SC RING所属
■身長:176cm ■生年月日:1995年9月16日■戦績:21戦18勝3敗(5KO )
■タイトル WAK-1F K-1ルール世界王者、IFMA ムエタイ ウクライナ王者(3度獲得)
ICO COMBAT 世界王者、IFMA EUROPEAN CHAMPIOM MUAY THAI
IFMA SILVER MEDALIST WORLD CHAMPIONSHIP MUAY THAI
WAKO WORLD CUP CHAMPION K-1 RULES

PHOTO:吉田了至