7月6日、タイ・ランシットスタジアム「KICK REVOLUTION 日本-タイ5VS5全面対抗戦」中堅戦126ポンド契約3分5ラウンド

清川祐弥(日本/新宿レフティー)対ポンサックレック・シットダープニット(タイ)   清川選手が判定勝利

<文・布施鋼治 写真・早田寛>

タイに入ってから清川は調整に苦しんでいた。契約体重は126ポンドだったが、大幅にオーバーしていたのだ。決戦2日前、ピーナン96ジムに最終調整に足を運び、ジムにある体重計に乗ると、新宿レフティージムの浜川憲一会長は頭を抱えた。

「キヨ、あと2.5㎏もあるよ」
清川は苦笑いを浮かべるしかなかった。とはいえ、もともと新陳代謝がいい体質のせいだろうか、悲壮感は微塵も感じられない。傍らにいた中向永昌に「(体重計には)裸足で乗った方がいいですかね?」と訊く。
タイには体重計にはゆっくりと後ろの方に乗った方がいいという言い伝えがあることを思い出した。大丈夫かと突っ込むと、清川は「ホテルにサウナがついていて良かったですよ」と落ち着いた口調で話した。

清川祐弥2
翌日、他の選手たちが次々と計量をクリアーする中、清川はまだ減量に苦しんでいた。結局、三度目の計量でようやくパス。その瞬間、他の選手たちから拍手が沸き起こった。呉越同舟のチーム編成ながら、いいムードだ。
清川と対戦するポンサックレック・シットダープニットも計量をパス。身長は清川よりも低いが、見るからに身体能力は高そうだ。去年ラジャダムナンスタジアムで3戦闘っていることも判明した。血管が浮き出た体で清川は試合の抱負を語った。
「楽しみで仕方ない。明日は(得意の)ミドルを思い切り出したい」

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一度自分のペースを掴んだら、とことん強い。その一方でここぞという時に致命的なミスを犯してしまい、勝負どころを逸してしまう。よくも悪くも清川は極端なサウスポーだ。セコンドにとっては、これほど心臓に悪い選手もいまい。
ただ、この日の清川は幸いにも前者だった。1Rから左ストレートで試合の主導権を握る。ポンサックレックが組みにきても、清川は自分のペースを乱さない。ラウンド終了間際に放った左ストレートでポンサックレックは思い切りアゴを上げた。
ところが、2R、このタイ人が清川からスリップダウンを奪うと形勢逆転。さらに右ヒジ打ちや太股へのヒザ蹴りで攻勢に出る。清川の手数は減ってしまい、相手の攻撃を見る場面が目立って多くなる。ラウンド終了のラカーン(鐘)が鳴り響くと、ポンサックレックはポイントは俺がとったぞといわんばかりに右手を上げながら観客席にアピールした。

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このままズルズルとポンサックレックのペースに呑まれてしまうのか。そんな思いが脳裏をよぎったが、3Rになると清川は再び試合の流れを奪い返す。フォームの美しい左ミドルを軸に左ストレートや右ヒジを浴びせる。ラウンド終了間際、ポンサックレックがスリップすると、試合のペースは完全に清川に傾いたかのように見えた。
4R、清川のプレッシャーがきつくなってきたのだろうか、ポンサックレックは下がり始めた。ヒジ打ちやヒザ蹴りに活路を見出そうとするが、スタミナ不足は否めない。清川のセコンドからは「疲れているぞ」というゲキが飛んだ。
そして5R、リングサイドでメモをとっていると、取材ノートの前に鮮血が飛び散った。ポンサックレックの鼻血だ。途中、清川は突然横を向いてしまいセコンドが慌てる一幕もあったが、大事に至ることはなかった。誰の目にも清川の判定勝利は明らかだった。
試合後、清川は頭をかいた。
「ほぼイメージ通りだったんですけど、(セコンドからは)蹴りが足りないと怒られてしまった。蹴りを増やして、もっとフェイントをかけろとも言われたけど、フェイントも少なかったと思う。倒せると思ったけど、強かったですね。それにしても、やっぱり日本とは違う。スタジアムの雰囲気は新鮮でした」 清川らしいといえば清川らしい。この経験を日本でも活かせるか。

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