タイを主戦場に闘う志朗が、RISE WORLD SERIESに出場する。 これまで日本で出番の少なかった志朗だが、本場で闘う志朗の存在に注目していたファンが多かったという証拠だろう。 同大会はタイの現役王者2選手も参戦。肘無し3ラウンド戦といえども、ムエタイ色の濃いトーナメントだ。

今、タイのギャットペットプロモーション・テレビマッチで人気を集める日本人選手がいる。 キックボクシングジムBeWELL所属の志朗だ。

幼少期にムエタイに興味を持つと同時に、日本でのキックボクシングのアマチュア大会で常勝してきたが、いつも頭の片隅にあるムエタイの強さと魅力を掻き消すことはできなかった。

15歳の時には、ラジャダムナンスタジアムでタイデビューを果たすも結果はTKO負け。 この時から志朗の心にムエタイの存在は消せないものとなる。 ついには拠点をタイに移し、ムエタイジムに住み込みで本場の技を習得していった。

当時の志朗がいた50㎏前後の階級は、タイ全土で数万人ともいわれる選手層があり、一回勝つだけでもかなり大変なこと。 そんな環境で田舎試合を数戦こなした後、16歳でルンピニースタジアム初勝利を決める。

その後も本場のムエタイにこだわり、勝ったり負けたりを繰り返しながら試合のレベルを上げていった。

25歳の現在、約50戦を消費し、現在ではタイ大手ギャットペットプロモーション所属の常用選手として、ルンピニーで“シロー”の名を轟かせるほどの人気選手となった。

ムエタイで勝ち上がっていくには、どの様な要素が必要なのか? 著者が思いつくことをざっと挙げてみると…

1、首相撲ができる

2、駆け引きができる

3、認知度がありギャンブラーから信用されること

4、打つ蹴るだけでなく、組んだ攻防からも強さをみせなければならない。

よって通常の打撃格闘技と異なった筋力が… などなど、挙げればキリがないが、日本のキックボクシングと大きく違うことは確かだ。

本場のムエタイで常勝するため、これらの要素を身に付けたくても、1,2ヶ月のタイ合宿、及び一度や二度タイの試合を経験したくらいでは,身に付くものではないだろう。 志朗が長年のタイ修業で培ってきた技や強度、そして強者が集うリングで得てきた戦績などの積み重ねがあって、そこではじめてテレビマッチの常用選手としての役割りを担えるというものである。

これらの経験値は嘘をつかない。しっかりと志朗の体に染みつき、RISE WORLD SERIESで志朗の大きな武器となるはずだ。

志朗が、RISE WORLD SERIES に参戦するとあって、タイの関係者らも注目している。 ムエタイのテレビマッチを専門で扱うムエタイ誌「ムエトゥー」のヤイ記者は 「タイのテレビマッチは選手の入れ替わりも激しい厳しい場所なんだ。 そんなルンピニーのテレビマッチを主戦場にしてきた志朗が海外強豪とのトーナメントに参戦するのはすごく興味があるよ」

またムエタイ情報をタイムリーで扱う「ムエサヤーム」のポップ記者は 「タイからもスアキムやルンキットといった現役王者が出るからね。ただ最近、日本で負けるムエタイ王者もいる。日本の志朗や天心(那須川)が、タイの強豪とどう闘うのか非常に興味がある。 志朗であれば、本場のムエタイだけでなく海外での闘い方にも慣れているから志朗が優勝する可能性も高いだろうね」 といった声が届いている。

本大会出場のタイ選手2名は、現役バリバリのムエタイ王者ということで、ムエタイ色の濃いトーナメントともいえるだろう。 RISEの主宰者で本大会プロモーターでもある伊藤隆代表は、かつて現役時代にタイ修業やタイ遠征に励んだ元王者。 そんな伊藤氏の「ファンに本物の強さに触れてほしい!」という意気込みといえよう。 どのようなトーナメントになるのか、一回戦開催から非常に楽しみである。

 

TEXT&PHOTO早田寛 Hiroshi Soda (タイ外務省広報局及び、ルンピニー・ラジャダムナン 両スタジアム、公認フォトグラファー)