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『KICK REVOLUTION2015 日本-タイ6VS6』(3月17日・タイ国ランシットスタジアム)の第1試合で、麗也(96ピーナン/BeWELL)はガイチョン・ソーチャイワット(タイ)とフライ級5回戦で対戦した。結果は3-0の判定負け。麗也は最後までガイチョンとの体格差を克服することができなかった。(文・布施鋼治、写真・早田寛)


うわぁっ、でけぇ。
実際にリングで対峙すると、麗也はガイチョン・ソーチャワットとの身長差に愕然とした。公式プロフィールでのガイチョンの身長は168㎝。165㎝の麗也と比べてもそんなに大きい方ではなかったが、彼の目の前に立つタイ人は、どう見ても7~8㎝前後の差があるように思われた。
ガイチョンは弱冠16歳。いまだ成長中ということなのか。大会翌日、麗也は表情を時には曇らせながら試合を振り返った。
「(当日計量時に)ちょっと大きいなと思いましたけど、結構身長差がありましたね。足も長かったので、1ラウンドからちょっとやりづらいなと思いました」

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試合開始早々、ガイチョンは左右のハイキックで襲いかかる。スピーディーでモーションが小さいので、麗也はガードするのが精一杯だ。お返しに左ジャブを餌にローを打ち込むと、バンコクのジムで練習中というこのタイ人はすかさずローを打ち返してきた。
勝負の分岐点は2Rに訪れた。ガイチョンは右ヒジをヒットさせ、さらに長身を活かした飛びヒザ蹴り。ムエタイでは打たれたら打ち返すのがセオリーながら、この場面でも麗也は打ち返すことができなかった。
3ラウンドになると、ガイチョンは首相撲での勝負にも挑んできた。ムエタイで身長差は大きなアドバンテージになる。首相撲ひとつとってみても、上から覆い被さるように組んだ方が遥かに有利なのだ。
案の定、ガイチョンに組まれヒザを打たれると麗也は防戦を余儀なくされた。ガイチョンが左ミドルキックで追い打ちをかけても、麗也はされるがまま。時間が経つにつれ、一方的な展開となった流れに麗也は唇を噛んだ。

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「ミドルやヒザを蹴られたあとに蹴り返せない。受けたままになっていた。自分の悪い癖が出てしまった」
打開策がなかったわけではない。パンチやローを当てようと思ったが、覆いかぶさられるように組まれると万事休す。麗也は、ほとんど何もできない自分をもどかしく思うしかなかった。
「組まれたら本当に強かった。自分の有利な体勢に持っていくことはできなかった」
5R開始直後、麗也サイドについた96ピーナンジムの関係者は観客席にいる知人に「身長が違いすぎる」とジェスチャーを交えながら伝え、首を左右に振った。
5R終了のゴングが打ち鳴らされると、麗也は肩を落とした。判定は聞くまでもなかった。肩を落とす麗也をガイチョンは抱き寄せて健闘を讃え合った。

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少し時間を置いたらガイチョンと再戦してみたいかと水を向けると、麗也は頷いた。
「やってみたい気持ちはあります。あれくらいの相手には勝てるようになりたい」

──勝つまでにはどのくらいの期間が必要?
「1年ですか。それまでにたくさん練習して乗り越えたい」
具体的に自分に何が足りないかは把握している。
「ガイチョンのような背の高いタイ人にミドルキックや前蹴りを蹴られると何もできない。まずはそれをどうにかしないといけないでしょう。体格のハンディは埋めようがないけど、まわりから『大きかったからしょうがない』とは言われたくない」

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帰国後は徹底的にフィジカルを強化するために、志朗とともにTRIBE TOKYO MMAに行く決意も固めた。ついこの間まで「TRIBEの練習についていけるかどうか不安」と通うことをためらっていたが、強くなるために躊躇している暇はない。
何事にも控えめで遠慮がちだった麗也に初めて負けん気が宿ったか。
▽フライ級3分5ラウンド
○ガイチョン・ソーチャイワット(タイ・115・8ポンド)
〔判定 3-0〕
×麗也(日本・116ポンド)