2019年1月6日
タイ・ランシット県タイ・オトコー3スタジアム
第2試合 122P契約
×ペットサムレット・オーボートーノンヤントイ(タイ)
VS
〇シロ―・ペットギャトペット (志朗:キックボクシングジムBeWELL)
結果 : 志朗 判定勝利
2019年、第一戦目はギャットペット興行プロモーター、ヒアチュン氏の誕生祝賀興行に参戦した。
今年で72歳となるヒアチュン氏は、タイのBBTV生中継テレビマッチを30年以上もプロモートする他、ルンピニーやその他多数のテレビマッチをプロモートし、
現在タイのナンバーワンプロモーターと言っていいだろう。
志朗がギャッペットプロモーション直属の同ジムに移籍し、今年で2年目。
その間の戦績は7勝5敗。ローキックを軸とした試合運びは多くのギャンブラーから支持を集めてきた。
そして今回のプロモーター誕生祝賀興行に抜擢されるほどになった。
対戦相手の変更もあり、今回は普段より重い122P契約(55.8㎏)で闘う事に。
ギャットペットプロモーションの常用選手として2年間も闘う過程の中で、現在では対戦するほとんどが、元王者やランカー選手となってきた。
今回の対戦相手ペットサムレットも最近までラジャダムナン・バンタム級のランカーでパンチやロー、そして鋭い肘を打つ選手。
志朗が9月に判定負けしたペットアッサウィンに翌10月に勝ち越しているというから、その強敵ぶりがうかがい知れる。
この興行もタイデジタルTV34ch(アマリン)で放映され、試合前レートは11-8でペットサムレット有利で開始された。
放送アナウンスで
『この試合、両者とも技が普通じゃありません。ペットサムレットも絶頂期だった頃は、7、8試合連続KO勝ちということもありました。
シローの方も何人ものタイ人をKOしてきています。どちらが倒されても大丈夫、スタジアムには医師がスタンバイしています。皆さん、瞬きしないでじっくり見てください』
という過激なトークが続き…
初回から、いきなりローキックの蹴り合いが始まった。
ペットサムレットも、流石ローキックが主武器とささやかれる選手だけあり、そのローはスピーディーで強烈だった。
志朗のカットの方が早かったものの、カットした脛の上からでも、ダメージ負いそうな勢いだ。
だが志朗もローキックの名手だ。相手がカットできない一瞬の体勢を見計らい、即座に蹴り上げる。
この相手の間合いを見抜いて蹴り上げるローキックは、他のムエタイ選手にはない志朗独自の武器といえるだろう。
2ラウンドに入り、やはり志朗のローキックが指導権を握ってきたか。
ペットサムレットは志朗の意表を突いた速いローを避けれきれず、志朗のをモロに太ももに食い込ませ体勢を崩す。
志朗はこことばかりに、さらに蹴りこむと、場内賭け率も5-2で志朗有利に逆転。
ペットサムレットの足が効いてきていることは確かだった。
志朗は、このままローキックでペットサムレットの足を襲い、KO勝ちまでつなぐのか。
それとも、ペットサムレットの反撃はあるのか…
3ラウンドに入り、ペットサムレットはあからさまに組んできた。志朗が日本人という事で、首相撲が苦手だと見込んでだろう。
たいていの外国人選手は首相撲対策ができず、一度タイ人に組まれたら膝蹴り地獄に嵌りズルスル負けパターンに陥るが、
だが志朗は、ペットサムレットの突進を体勢捌きでかわし膝で応戦。
外国人が、この首相撲の攻防を取得したくとも、タイ人の練習相手の少ない母国では難しいだろうし、
タイで技を身に身に付けようにも、1,2ヶ月程度のタイ合宿で身に付くような簡単なものではない。
志朗のように長年タイでの選手活動に時間を費やし、試合と練習とを交互に重ねてきたからこそ、実戦で使える技が身に付いたのだろう。
4ラウンド、ペットサムレットはさらに首相撲を挑んできた。ここぞとばかりに大胆にジャンプして飛び膝で志朗に襲いかかる。
ペットサムレットとしてはジャンプして遠くから襲いかかることで、志朗に体圧を与え、組んだ時の体力消耗なども狙ったわけだろう。
だが、このジャンプし遠くから飛びかかってくる時のガードの隙を志朗は見逃さなかった。
膝を突き刺しに飛んできたペットサムレットの顎に左フックを決め、ペットサムレットはマットに尻もちをつく。
すぐに立ち上がってきたためレフリーはスリップとし試合続行。その後もペットサムレットはお構いなしで組んできたが、
さらに志朗の膝に合わせたパンチが2,3発立て続けに決まるとペットサムレットの動きも一瞬鈍る。パンチが効いていた証拠だ。
ここから志朗の蹴りやパンチも生き生きと決まり始め、ここで場内賭け率も再び5-1志朗有利と一気に差を広げた。
3ラウンドからの組まれた流れで、この先どうなってゆくのか心配だったが、
志朗が試合後に『相手が飛び膝を出した瞬間、ガードががら空きになるので、カウンターパンチを狙っていた』
と語ったように、荒々しい首相撲の中で隙を見極め、即座に行動に移せたことは大したものだ。
最終ラウンド、リング上での闘いと、そして勝敗に影響される場内賭け率でも、両方とも志朗が勝っていた。
判定では勝てないと悟ったペットサムレットは、大きなパンチラッシュで志朗を倒しにくるが、志朗は前蹴りで上手く捌き、
そしてペットサムレットを内股へのローキックで足払いし、ペットサムレットをこかす。
この様な小技が出せるところも、志朗がムエタイでの技や試合運びを熟知しているからだろう。
志朗は前蹴りでペットサムレットを遠ざけ、ミドルやハイキックにつないだ。
終了ゴングが鳴り、レフリーは志朗を勝者とした。
今回は試合前の急な相手の変更や、それに伴う、いつもより重い契約体重などの不安素材もあったが、
4ラウンドで狙ったパンチを当て突破口を見出せたことで、
プロモーターの誕生祝賀興行というビックイベントで勝利を決めることができた。
試合を振り返ると、3ラウンドからの首相撲の攻防が勝敗の分かれ道だったが、3月からはじまるRISEのトーナメントでは、首相撲や肘打ち無しなどのルールの違いはあるが、今回の様に即座に相手の隙を見つけ、ドンピシャリで狙った技を決める実力があれば、ルールの違いなど怖くもない。
志朗が常々口にする、『タイだけで勝てても意味がない。どこの国でも勝てる選手でないと強い選手とはいえない』
という言葉通り、世界中の強豪が集まるRISE WORLD SERIES トーナメントで、志朗が幼少期から培ってきた強さを見せてつけてほしい。
写真撮影・記事:早田寛
PHOTO&TEXT:HIROSHI SODA