7月6日、タイ・ランシットスタジアム 「KICK REVOLUTION 日本-タイ5VS5全面対抗戦」副将戦130ポンド契約3分5ラウンド

中向永昌(STRUGGLE) VS  ユーリ・ソークルウォン(タイ) 中向選手の判定勝利。

「危なかったですね」
試合後、左目を真っ赤に腫らした中向永昌はユーリ・ソークルウォンとの激闘を振り返った。無理もない。試合開始早々、劣勢に追い込まれたのだから。ユーリの攻撃を被弾し続けるなどまるで相手の攻撃がよく見えていないかのように、動きもぎこちなかった。
いったい中向の身に何が起こったのか?

中向①(TOP)

「一発目のハイで相手の指が目に入ってしまったんですよ。その直後から(左目は)全然見えなかったです」
納得。片目が見えなければ、自分の距離を保つことができない。
1R終了後のインターバル。中向陣営はすぐに患部にアイシングを施した。多少のケガなら日常茶飯事ながら、ここまで大きなケガを試合中に負うのは初めての出来事。それでも、パニックになることはなかった。
「どうしようかとも思ったけど、途中からちょっとずつ見えてきたので」

中向②

2Rから中向の逆襲が始まった。チャンスと見るや、コツコツと強い右ローを浴びせていく。ユーリに鼻血を出させたシャブも有効に映った。
伝説の名王者ユーリ・アルバチャコフの名前をリングネームにしたユーリも負けてはいない。2R終了間際、四つの体勢からスリップダウンを奪ったかと思えば、3R序盤には倒してからサッカーボールキックを浴びせるなどラフに攻め込んでくる。

3R終盤には中向をロープに詰めてヒザ蹴りを見舞うなど、再び試合の主導権を握ったかのように見えた。
試合の流れは大きく変わったのは4R。中向の右ローが効いてきたのか、ユーリが下がり始めたのだのだ。ロープを背にする場面も目立って多くなった。
5Rになっても、試合の流れは変わらない。中向のローの猛攻にユーリは防戦一方となり、再三スリップダウンを奪われる。
「ローが効いているぞ!」
もっとミドルを蹴りたかったが、セコンドの指示は絶対だ。中向はローを蹴り続け、試合終了のゴングを聞いた。
その直後、中向だけではなく、ユーリも「俺が勝者だ!」といわんばかりに両手を挙げたが、ジャッジペーパーを集めたレフェリーは中向の勝利の支持した。

中向③

中向は安堵の面持ちを浮かべながら、4Rからいけるんじゃないかと試合を振り返った。
ラウンドを重ねるごとに自分でもちょっとずつ動けるようになってきたので。とくに効いた攻撃はなかったですけど、とにかくうまかったですね」
先鋒戦から中堅戦までは日本チームが3連勝。副将としてプレッシャーがなかったといえば嘘になる。
「ただ、あまり緊張はしなかったですね。(同門の)松崎選手のKO勝ちは本当にうれしかったし」

中向④

5VS 5マッチの前に行なわれていた歌謡ショーが長引いたせいか、試合前に予定されていた選手入場式は急きょ中止に。試合開始の時間も当初の予定より大幅に押したが、中向は平常心を貫き通した。
「タイはそういうもんだとみんな言っていたので、とくになんともなかったですね。でも、本当にいい経験ができたと思います」
そうなのだ。例えテレビの生中継がある大会であろうと、予定通りにプログラムは進まない。それがタイなのだ。
試合後、中向は初めて本場タイ料理に舌鼓を打った。初めてのタイ滞在。試合前にお腹を壊したら身もふたもないと思ったからだ。大会の3日後、中向は機上の人となったが、その間一度も体調を壊すことはなかった。
シャイなイケメンチャンピオンはタイの風土に合っているのか。

中向⑤

<文・布施鋼治  写真・早田 寛>